第465回 「ラスト・シャンハイ」

上海の黒社会の顔役としてのし上がるダーチー(中年期を演じるチョウ・ユンファ)(c)2012 Bona Entertainment Company Limited. All Rights Reserved.(以下同じ)
上海を舞台にしたチャイナ・ノワールというジャンルはなぜか映画製作者の心をくすぐるようだ。70年以降、数多くの作品が生まれているが、その代表的なものが、チョウ・ユンファ主演のテレビシリーズ「上海灘」と、そのリメークのリメーク、つまり“孫筋”にあたるホァン・シャオミン主演の「新・上海グランド」だろう。

ダーチー(青年時代を演じるホァン・シャオミン)にはジーチウという恋人がいる
80年代の香港と00年代の中国。新旧のテレビシリーズで同じ役を演じファンの心をわしづかみにした両雄が、本作ではダブル主演を果たし、初めて同じ主人公の青・壮年期と中年期を演じ分けている。その演技を見比べるだけでも存分に楽しめる。
1913年、上海近郊の町の青果店で働く青年チェン・ダーチー(ホァン・シャオミン)は、京劇学校の娘イエ・ジーチウと将来を誓い合う仲だった。しかし、あるトラブルに巻き込まれ離れ離れに。その後、上海の裏社会の大ボス、ホン・ショウティン(サモ・ハン)の配下に入ったダーチーは次第に頭角を現し、やがてホンと義兄弟の盃を交わして、上海黒社会の顔役として売り出していく。

ダーチーは対立グループとの抗争を経て、やがて黒社会で頭角を現していく
1937年、中年となったダーチー(チョウ・ユンファ)は、自分の人生を変えるようなことが起きるたびに現れるマオ(フランシス・ン)から、地下組織に所属する学者チェン・メイメイに近づき、組織の名簿を入手するよう頼まれる。チェンの妻はジーチウだった。彼女と再会したダーチーはほろ苦い過去を思い出す。互いに連れ合いがいる者同士。とはいえ初恋の人への特別な思いは隠しようもなかった。やがて日中戦争の戦火が拡大し、二人はその渦に巻き込まれていく。

京劇を楽しむ手前左からダーチー、大ボスのホン(サモ・ハン)、マオ(フランシス・ン)
さて主役の青・壮年期と中年期を演じ分けているホァン・シャオミンとチョウ・ユンファ。片や生きのいいナイスガイ、もう一方は貫禄十分の大ベテランだ。筆者はどちらにも魅力を感じるが、とりわけ後者の最近の出演作「孔子の教え」で、孔子が衛の国の霊公夫人南子(ジョウ・シュン)に謁見した際に、南子の誘惑を巧みに断るシーンなどはチョウ・ユンファならではの演技と感心したことを覚えている。
ただ、これはチョウ・ユンファのせいというわけではないが、今作でホァン・シャオミン演じるダーチーに慣れた目が、チョウ・ユンファに切り替わる場面で、少なからず違和感を感じることがあった。別の言い方をすれば、チョウ・ユンファの貫禄が際立っていたというべきか。

初恋の人との再会に様々な思いに揺れるジーチウ(ヨランダ・ユアン)とダーチー
ダブル主演という企画は良かったが、双方の出演場面をほぼ半々にしたことが結果的に双方の良さを生かしきれなかったとはいえないだろうか。オーラの強い先輩には少し遠慮してもらい、ホァン・シャオミンをメーンに7対3、もしくは6対4ぐらいにしても良かったと思う。
この作品はノワールなので、しばしば対立する者同士の激しい渡り合いが展開される。あるいは日本軍による上海空爆シーンは、アクションを越えて本格的なスペクタクル映画である。その空襲下、砲弾や爆風を避けながら、ジーチウとダーチーが愛を確かめ合うように駆け寄り抱き合うシーンは、画面も音楽も突然、メロドラマ風に切り替わる。まさに、そこだけ空気が変わるのである。
また捕らわれた大ボス夫人を助けるため、ダーチーは舞台で踊るジーチウと連携し、マオとその仲間の目を盗んで救出に向かうが、ジーチウが京劇を演じながら見得を切る場面がそのままダーチーへの目による合図になるという演出上の工夫はスリリングで見応えがある。悪役に徹したフランシス・ンの演技も異彩を放っている。
検閲のある中国では黒社会を英雄的な存在として描くことはご法度だ。とはいえヤクザが抗日運動に参加し、愛国者になるという展開は例外なのだろう。抗日と恋愛、アクション、それに看板の義理と人情の要素も盛り込んだ欲張りの娯楽大作である。監督はウォン・チン。第32回香港電影金像奨最優秀美術賞と最優秀主題歌賞の2部門で受賞。
「ラスト・シャンハイ」は9月28日よりシネマート六本木ほかにて公開【紀平重成】
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