第580回「ネコのお葬式」

「ネコのお葬式」の一場面 (C) Indieplug All Rights Reserved.
ネコ好きの人にはたまらない作品だ。子ネコの仕草が可愛いだけでなく、些細なことから分かれてしまった元カップルの仲を取り持つように、その後、病死した子ネコがお葬式という2人の再会の場をプレゼントするのだから。
シンガーソングライターとしてのデビューを目指す青年ドンフン(k-POPグループ「SUPER JUNIOR」のカンイン)と漫画家志望の女性ジェヒ(パク・セヨン)は、友人の結婚式で出会い恋に落ちる。ドンフンの生まれ故郷に2人で遊びに行き「一緒に住む?」というジェヒの一言で同棲生活が始まる。毎晩、近所で鳴いていた子ネコを拾った2人は、雲を意味するクルムと言う名前を付けてネコのパパとママになる。やがて2人は、それぞれの夢を追いながら愛を育んでいくが、些細なことですれ違うことが重なり別れてしまう。

一目ぼれしたジェヒに愛をこめて歌うドンフン(カンイン) (C) Indieplug All Rights Reserved.
映画はクルムが亡くなって葬式をするために再会するところから始まり、現在と過去を行き来しつつ、あのときめきは何だったのか、心がすれ違ってしまったのはなぜか、そして止まったままの愛は果たして動き出すのかという過去の追体験と反省、現在の心境の揺れをみずみずしく描いていく。

ネコを飼い始める2人(左はジェヒ役のパク・セヨン)(C) Indieplug All Rights Reserved.
可愛がられていたネコが自分の死後“パパとママ”の再会を演出するという展開はおとぎ話のようでもあり、だからこそその世界を堪能したいという方にはお勧めかもしれない。この殺伐とした世の中を生きるには、せめてそんな心の癒しを感じる自由は残しておきたい。
ドンフンは亡くなったクルムに最後の言葉として「今まで至らなくてゴメン。また出会えたら次は大事にする」と贈る。ネコにだけでなく、現在のジェヒにも、そして多くの人にも声掛けしてほしい言葉である。

子ネコのクルム (C) Indieplug All Rights Reserved.
原作は人気のデジタルコミック。主演のカンインは劇中とエンドロールで愛する人への切ない思いを感情豊かに歌っている。またパク・セヨンも恋愛中とその1年後の別人のような表情を、それぞれ美しく見せている。

再会した二人はぎこちない会話を続けるが……(C) Indieplug All Rights Reserved.
若者同士の危なっかしい恋愛は真剣であればあるほどハラハラするが、イ・ジョンフン監督の演出は微妙に肩の力を抜き、その会話も時にコミカルで楽しめるだろう。
「ネコのお葬式」は2月13日よりシネマート新宿ほか全国順次公開。
【関連リンク】
「ネコのお葬式」の公式サイト
http://www.rosenbus-movie.com/