第616回 「毎年悩ましい大阪アジアン映画祭」
今年も大阪アジアン映画祭の鑑賞スケジュールをどう組むか悩む季節がやってきた。サラリーマン生活を続けている以上、2回ある土日の前半に行くか、それとも後半かという選択の問題に過ぎないと言われれば、まさにその通りなのだが、せっかくの機会だからやはりあれも見たい、これは外せないと悩みは尽きない。
例年ならある程度で見切りをつけ、2週分押さえていたホテルの一方をキャンセルしていたのだが、今年は見たい作品が前後半でほぼ同数。ここで見逃すと日本公開されない限り2度と見ることができない作品もあるかと思うと、また作品選びの振り出しに戻ってしまうのだ。
妙案はないか。スケジュールを見つめること1時間余。………あった。東京と大阪を2往復すれば、つまり週末の金曜夕刻に大阪入りし、日曜帰りを2週続ければ、取っておきの12本を見る事が可能になる。ホテル代や往復の新幹線代が倍に膨れ上がるのは痛いが、海外旅行を考えれば無理な話ではない。しばらくは外飲みを減らし、少々の疲れならタクシーは乗らないと決めれば……。
12本の中には暉峻創三プログラミング・ディレクターが当コラム恒例の「私のアジア映画ベストワン」で挙げたフィリピン映画「パティンテロ」が含まれているのは言うまでもない。
「フィリピンの子供にとってのドッジボールや鬼ごっこ的な遊び”パティンテロ”を通じて、負け組少女が威厳を持って立ち上がる姿を描いたもの。『シェルブールの雨傘』のジャック・ドゥミも真っ青な色彩設計、周星馳監督もビックリのケレン味など、見たことのない斬新なセンスに溢れたフィリピン映画」 。こう紹介されたら、あなたは平静でいられるだろうか?
せっかくなので、私が注目している作品をもう少しご紹介すると、前半では「ミセスK」「わたしは藩金蓮じゃない」「1日だけの恋人」など中国の巨匠、フォン・シャオガン監督やマレーシア、タイの人気監督作品が並ぶ。後半ではウェイ・ダーション監督の「52Hz,I LOVE YOU」やハーマン・ヤウ監督の「77回、彼氏をゆるす」、あるいは「突然20歳 タイの怪しい彼女」あたりの作品をマークしている。
今から待ち遠しい作品ばかりである。ちなみに暉峻さんは「前後半の土日はどっちに行けば正解?」という切なる問いに、「両方行くのが正解では」とニッコリ。その曇りのない笑みに愚問を発した自分を恥じた。
「大阪アジアン映画祭」は3月3日~12日、シネ・リーブル梅田4など6会場で開催【紀平重成】
【関連リンク】
「大阪アジアン映画祭」の公式ページ
http://www.oaff.jp/2017/ja/index.html