第546回「ドラゴン危機一発’97」

「ドラゴン危機一発’97」の一場面。この迫力(C)1997 BY MY WAY FILM COMPANY LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
シネマート六本木の閉館に伴い、特別ラスト興行としてサプライズ上映されている作品。タイトル通り公開は18年前の1997年。主演のドニー・イェンがとにかく若い。そして炸裂するカンフーアクションには若さゆえの無鉄砲さとでもいうようなド迫力がある。この機会に大きなスクリーンで体感されたい。

刺客に囲まれ攻撃に備えるマンヒン(ドニー・イェン)(C)1997 BY MY WAY FILM COMPANY LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
ドニー・イェンと言えば、最近では「イップ・マン」シリーズ、「捜査官X」「スペシャルID 特殊身分」「モンキー・マジック 孫悟空誕生」など多様なアクション映画に次々と出演しているが、彼が注目を集めるようになったのは、1990年代前半の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズにおける本格的なアクションからであろう。

マンヒンには守りたい恋人(カルメン・リー)がいた(C)1997 BY MY WAY FILM COMPANY LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
その彼が初めて監督を任され製作総指揮をとり、さらに主演にして武術指導、脚本まで手掛けた話題作である。
若い男がマンヒンという名の伝説の殺し屋(ドニー・イェン)に近づく。男の目的は殺しの依頼。側近の老人に案内されマンヒンに会った若者は、彼から昔話を聞かされる。背景が真っ暗な場所で聞かされる荒唐無稽のような話。やがて闇に吸い込まれるように彼の物語る世界が広がっていく。

足蹴りの一撃にのけぞる刺客たち(C)1997 BY MY WAY FILM COMPANY LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
荒涼とした小さな村にマンヒンが迷い込む。なぜか記憶を失っている彼を次々と刺客たちが狙う。マンヒンにはかつて恋人(カルメン・リー)がいた。その彼女に会ったことで徐々に記憶を取り戻していく。ある日、ついに自分が盗賊団の首領、ビッグ・ウルフと戦っていたことを思い出すのだった。
俳優からスタッフまで一人5役の大任を担ったドニー・イェンは、自分の得意分野であるアクションを思う存分魅せる工夫を凝らしたようだ。襲われる恋人を助けるため必死の追撃を試みる。大ナタを使った迫力ある立ち回りから手技、足技を織り交ぜてのスタイリッシュな格闘技。

脳天に命中?(C)1997 BY MY WAY FILM COMPANY LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
中でもドニー・イェンが空中に高く飛び上がり、長い足を180度以上も開脚させ、一瞬のうちに相手を蹴り倒すカタルシス。この爽快感はコンピューターグラフィックスでは出し得ない肉と骨のきしみによる産物と言えるだろう。
ウォン・カーウァイ監督の華麗に徹したアクションも見ごたえはあるが、肉体の限りを尽くした格闘技は有無を言わさない力がある。そしてドニー・イェン自身のアクションの変遷を確認できるという楽しみもある。ともあれ、この作品には自分の能力と思いの限りを存分に込めたという彼の喜びを感じることができる。
「ドラゴン危機一発’97」は、6月12日までシネマート六本木にて特別ラスト興行【紀平重成】
【関連リンク】
「ドラゴン危機一発’97」の公式サイト
http://www.cinemart.co.jp/theater/special/donnie/