第579回「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」
台湾に行きたくなる映画がまた一つ誕生した。テレビで人気のローカル路線バスを乗り継ぎ3泊4日の期限内に目的地に到着できるかどうかをスリリングに見せるという番組の映画版。しかも舞台が台湾とくればもう見ない訳にはいかない。言葉の壁に想定外の台風まで立ちはだかって、男女3人は無事ゴールの台湾最南端、ガランピ灯台へたどり着けるのだろうか?
テレビ東京系の人気番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」は、いつも綿密な計画を立て旅をリードすることが大好きな俳優の太川陽介と、天然の自由人で漫画家と俳優を兼ねる蛭子能収とのコンビの迷走ぶりが売り物。さらに今回は女優の三船美佳がマドンナ役で参加し、殺気立つ2人の空気を和ませている。
映画は台湾の高速鉄道(新幹線)が発着する台北駅から始まる。旅には3つのルールがあり、3泊4日で指定の目的地にゴールすることのほかに、ローカル路線バスのみの使用が認められ、高速道路や鉄道、飛行機、船、自転車、ヒッチハイク、情報収集のためのネット利用の一切を禁止、さらにルートの選定、宿選びまで全て自分達でやることが求められている。高速道路網が発達している台湾で高速バスを使えないのは結構辛い。
それを証明するかのように、台北から最初に向かったのは板橋、次に桃園だ。高速バスなら一気に南下出来るのに、誤って乗ってしまった高速道路を降りてスタート地点へ戻るというアクシデント。ようやく乗り継ぎ着いたのが国際空港のある桃園である。ということは南進はわずかで、ほとんど成果はゼロということになる。あーあ、先が思いやられる。
ルート選びは偶然の連続なのに、時おり懐かしい風景が飛び込んで来るのが嬉しい。風の街、新竹はIT企業が集中し台湾のシリコンバレーと呼ばれているが、台湾映画ファンには「九月に降る風」を思い起こさせる。メルヘンチックな塔と屋根が可愛い駅舎が一瞬映って満足。一方、戦前建てられ新竹のシンボルとして親しまれた映画館「有楽館」(現在は影像資料館)は残念ながら出てこない。
ネットが使えないので路線バスがあるのかどうかや、あれば乗り場はどこで発車時間は?というやりとりは全部通りがかった地元の人にしなくてはいけない。その際に言葉の壁は大きな障害で時間をロスするばかりだが、その反面、親身になって教えてくれる人が次から次にあらわれて、そんな交流が旅を味わい深いものにしていく。
乗り場を捜し回っているうちに、その日の最終バスが出てしまい、すべては明日の朝にとなってしまったり、疲労困憊の末に恐る恐る入ったビジネスホテルが意外にきれいで、清潔さにこだわる蛭子さんを喜ばしたりと、デコボコ気分の旅は続く。気は滅入っても美味しいご飯にさえありつけば、思わず笑みがこぼれるのが仲間と行く旅の良さだろう。
さて、旅は南進を続け3日目に嘉義まで来たものの、台風に見舞われてすべてのバスがストップ。じりじりと動き出すのを待つが、バス便の再開は明日という。南進はようやく半分なのに、許された時間は明日1日だけとなりそうだ。バスはあるのか、あってもうまくガランピ灯台まで乗り継ぐことができるのか。3人の顔から笑顔が消えた。
事の行方も気になるが、筆者は映画のロケ地がいつどんなふうに出てくるのか気になってハラハラの連続。その期待にも映画は応えてくれるのか……。
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」は2月13日より全国公開。
【関連リンク】
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」の公式サイト
http://www.rosenbus-movie.com/