第679回 「SHOCK WAVE ショックウェイブ 爆弾処理班」

刻々と時間が迫る中、爆弾を処理するチョン隊長(アンディ・ラウ) (C)2017 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED / INFINITUS ENTERTAINMENT LIMITED
テロリストと爆弾処理に当たる警察とのアクション巨編としても存分に楽しめるが、思いもかけない状況に追い込まれた人々の内面からあふれ出す切実で時に激しい感情を見事に描いており、観客は目が離せなくなる。
アンディ・ラウがテロリストと渡り合う警察の爆弾処理班の隊長を凛凛しく演じ、プロデューサーも務めた作品。たとえ出番が一瞬であろうと、あるいは本作のように全編出ずっぱりでも頼りがいある男としての存在感は全く変らないところがアンディらしいし、彼の魅力でもある。

同僚とテロに立ち向かうチョン隊長 (C)2017 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED / INFINITUS ENTERTAINMENT LIMITED
香港警察の爆弾物処理局の隊長チョン(アンディ・ラウ)は、犯罪組織の頭目であるホン(チアン・ウー)を逮捕するため潜入捜査をしていた。ホンに気に入られたころ、一味が銀行強盗を計画していることを知り、犯行に使うタクシーのナンバープレートを捜査の指揮に当たるチャウ(フェリックス・ウォン)に連絡する。ところがホンの弟ビウ(ワン・レオズイ)はチョンを疑いナンバープレートを差し替えて出撃したため、警察はタクシーの特定が遅れ、銀行襲撃を許してしまう。それでも逃走する犯行グループの身柄の大半は確保するが、肝心のホンを取り逃がしてしまう。

体中に爆弾を巻きつけられた警官に対応するチョン隊長 (C)2017 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED / INFINITUS ENTERTAINMENT LIMITED
1年半後、チョンは自らの表彰式を終えた帰りに、潜入捜査の指揮を執っていた同僚チャウの乗った車が目の前で爆発して彼が死ぬのを目撃する。仕掛けられていたのはホンが使っていたのと同じC4爆弾。その後も類似の爆発物が見つかり、チョンはホンが香港に戻ってきたことを知る。
やがてホンの手で想定を超える連続爆弾事件が発生する。香港最大の海底トンネルでトラックが道をふさぎ、トラックの中から現れた武装グループが数百人の人質をとる。さらに海底トンネル内に1000キロ爆弾を仕掛けたことを通告し、爆破と人質の命との引き換えに巨額の身代金を要求する。交渉役としてチョンを指名。それは潜入捜査で弟を逮捕したチョンへの強い復讐心からだった。ホン逮捕と人質救出のため、チョンたちは爆発物の解体に向かう。

妻に仕掛けられた爆弾を処理しようとするチョン隊長 (C)2017 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED / INFINITUS ENTERTAINMENT LIMITED
2時間近い作品の中で、爆弾が見つかるたびにチョンが呼び出され爆発物から信管を慎重に外す処理が施される。数が多い上に、爆発までの時間が限られているため、そのたびに神経をすり減らす作業となる。それを面白がって見ているのが爆弾魔のホンである。しかも手段はだんだん卑劣となり、チョンの同僚や家族まで巻き込もうとする陰湿さである。ベテランのチョンでも手に負えないほど体中に爆弾を巻きつけられ平静さを失っている警官をわざとチョンの前に送り出すなど、あくどいやり口はエスカレートするばかりだ。

テロリストたちの頭目ホン(チアン・ウー)に銃を向けるチョン隊長 (C)2017 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED / INFINITUS ENTERTAINMENT LIMITED
観客は困難な状況にあってもギリギリまで希望を捨てずに対応し続けるチョンに感情移入し、彼の一挙手一投足に胸をドキドキさせることだろう。完全無欠な男というより、他の人と同じように悩みもあるけど、いざという時は前に進もうと考える、そんな度胸の据わった役柄にアンディ・ラウの姿を重ね、作品を大いに堪能されるに違いない。
その代償として作品終了後はどっと疲労感を感じることだろうし、繰り返し爆弾が用意される展開に、映画館を出た後も周囲を見渡して爆発物がないかどうか確認したくなるかもしれない。
監督、撮影、脚本は「イップマン 最終章」のハーマン・ヤウ。ホン役を「罪の手ざわり」のチアン・ウーが演じる。「マトリックス リローデッド」などハリウッドでも活躍するディオン・ラムがアクション指導を担当。
「SHOCK WAVE ショックウェイブ 爆弾処理班」は8月18日よりシネマート新宿ほか全国順次公開【紀平重成】
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