第770回『人生の運転手 ~明るい未来に進む路~』のイヴァナ・ウォンさんに聞く
コロナ禍の中で映画人は何を考え、どう映画文化を守っていこうと努めているのだろうか。ちょうど10月1日から本作の日本公開が始まったので主演のイヴァナ・ウォンさんにオンラインインタビューをお願いした。

なぜ彼女を取材しようと思ったか。恋にも仕事にも熱心だったヒロインのソックは、恋人の裏切りに遭い失恋・失業・失意の“三失”に陥ってしまう。しかし決して人生を諦めようとしない強さをどう演じたのかを聞きたかったからである。
ーーソックは立ち直る際に運転手になることを選んだわけですが、あなたでしたらどうされましたか?
「私なら、まず解決方法を見つけようとします。そして、自分を落ち着ける、冷静な状態に置いてから、対応を考えます。あえてまったく違うことをやって気をまぎらわせてから対応するのも良いかもしれませんが、最終的に立ち直るためには、何事も時間が解決してくれると思っています」

ーーソックは「復讐よりも明るく生きたほうがいい」と考えるタイプのようですが、あなたの場合も同じですか?
「私の場合は“復讐”という2文字は全くないと思います。仮に非常に不愉快な目にあったりしても、逆に、どうしたら自分はもっと強くなれるか?ということを考えるだろうなと思います。どうしたら自分を良くできるか?と。そういった意味での“リベンジ”はありますが、人に危害を加えるという意味での“復讐”はないですね」

ーー期せずしてコロナの時代に公開されることになりますが、困難な時代を切り抜ける上で、本作はどういうメッセージがあると思いますか?
「そうですね、中には今回のコロナによって失業を余儀なくされた方もいらっしゃると思います。本作はもしかしたら、そうした皆さんに対して、何か“別のアイデア”のヒントになるかもしれないと思います。なぜかと言うと、それまでの業界の仕事とは全く違う仕事をやってみるのも案外良いことがあるかもしれないからです。例えば、私もこの映画に出演するために、バスの免許をとりましたが、それまで考えたこともなかった“運転手になる”という選択肢ができたんですよね。それは全く新しい発想でした。つまり、この映画のメッセージというのは、“人生というのは山あり谷あり、良い時もあれば悪い時もある”ということだと思います。どんなに悪いことが起きても、それは世界の終わりではないですし、ひょっとしたら、それをきっかけに新しい道が見えてくるかもしれません。“諦めることなく、色々なことを試してみる”という映画のメッセージを覚えておいていただくことで、もしかしたら、ご覧になる方の人生において、何か新たな希望が開けるかもしれません」

本作は昨年11月に香港で公開されたが、コロナのためにわずか1週間で映画館が営業停止になった。しかし映画の再上映を求める声が高まり今年の2月再上映が実現した。そういった経験があるせいか、イヴァナさんの話しぶりも大変前向きで、魅力的に映った。

ーー次回作の予定は? 決まっていれば内容を教えてください。
「実は2カ月ほど前に、来年公開予定の作品の撮影が終わったところです。おそらく来年の旧正月ごろの公開になると思いますが、コメディ映画です。“飯気攻心”ということわざにちなんだタイトルの作品です。このことわざは、日本で言えば“腹八分目がいい”という意味ですが、“気”の字を“戯”に置き換えて、『飯戯攻心』というタイトルです。食に関係した内容となっています。ぜひ日本でも公開されることを期待しています!
『人生の運転手 ~明るい未来に進む路~』は新宿シネマカリテ ほか全国順次公開中【紀平重成】