第786回「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」
前作の『止められるか、俺たちを』は70年代、映画の魔力に取り付かれた若者たちの青春群像でした。その構想は本作にも引き継がれていますが、今回は「人」よりもミニシアター作りに比重が置かれ、映画を見る「入れ物」にこだわる人々の姿を通じて映画の魅力が語られていきます。
前作から10年後の80年代といえば。ビデオが普及し始め映画館から人々の足が遠のき始めた時代。その流れに逆行するかのように、主人公の若松孝二監督(井浦新)は名古屋にミニシアター「シネマスコーレ」を作ります。相談を受けシアターの支配人となった木全純治(東出昌大)はプロダクション代表の若松監督に振り回されながらも、持ち前の明るさで経済的危機も乗り越えていきます。
そして映画の見方がますます多様化する中、木全たちはミニシアターこそ観客が見終わってすぐ感想を述べ合うのにふさわしい場所だとの思いを確かなものにしていくのです。「作品がよければ満員にすることも可能なはず」「映画は作っただけでは完成とは言えない。人に見られて初めて完成したと言える」。「ヒットする映画を作って、お客さんを入れることこそが恒常的なミニシアターの支援につながる」。どれもミニシアターの明日を示唆する大切な言葉と言えるでしょう。
12年に亡くなった若松孝二を、前作に続いて井浦新が演じ同監督の口癖たっぷりに熱演し、笑いどころも満載です。
『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』は3月15日よりテアトル新宿ほか全国順次公開【紀平重成】